エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
最終章『1年後②』

 どうしたんだろう。
 今日の昴さん、少し雰囲気が違う……。

 私が顔を上げると、昴さんが言う。

「聞いた。あの事故のときのこと」
「え……」
「辻中さんが俺に伝えてくれと言ったらしい。それで正司先生が連絡くれて会ってきた」

 辻中さんがそんなことを言ったなんて、正司先生のおかげで随分落ち着いてきたのだろうとほっとする。
 と、同時に、昴さんに色々知られてしまったのか、と少し気まずくもあった。

「そうだったんですか」
「なにが『辻中さんが落ちそうになって、つい』だ」
「その通りでしょ」

 茶化すように言うと、昴さんに睨まれた。
 背中が冷えてつい視線をそらしてしまう。

 それから少しして、そっと昴さんに視線を戻した。

「……黙っていて、ごめんなさい」

 私が言うなり、ぐしゃ、と少し乱暴に頭を撫でられた。

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