エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 昴さんはあの時と同じように手早くナポリタンを作ってくれる。

 私はコンソメの野菜スープを隣で作りながら、彼と時折目が合っては笑い合った。
 昴さんは出来上がったナポリタンをお皿に盛って、テーブルにコトンと置いてくれる。

 私も合わせてスープをパスタの隣に置くと、二人向かい合わせに座って同時に手を合わせた。

「「いただきます」」

 見た目も、香りも、あの時と同じナポリタンだ。

 ドキドキしながら口にしてみると、ほんのり懐かしい甘さが舌にのった。

「おいしい!」

 思わず叫んで、それからバクバクと食べてしまう。

 なんだろう、止まらないくらいおいしい。
 レシピ、聞こうかな。でもまた昴さんに作って欲しいし。

 昴さんは向かい合って目を細めて私を見ていたけど、自分も食べ始めた。

 そして一口食べて微笑む。

「やっぱり香澄と食べる食事が一番おいしいな」

「昔もそう言ってくれましたね」
「ずっとそうだったから」

 昴さんとは昔はあまり会えなかったのに、会えば何か食べてばかりだったな、と思い出す。

 今だって、大体二人でいるときは食べて、笑って、それからくっついて。

 やっぱり昴さん、私をずっと餌付けしてた?
 だから彼と顔を合わすたびに、もっともっと彼を好きになっていってるんだったりして。
< 192 / 219 >

この作品をシェア

pagetop