エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
1章『離婚旅行 1日目』

 飛行機が加速を増していくときはどうしても緊張してしまうけど、今日はいつにも増してそうだ。

 パリのシャルル・ド・ゴール空港まで片道約十五時間かかるという。
 私は飛行機の隣の席に座る昴さんをチラリと見た。

 私より二十センチほど高い百八十二センチの身長。ダークブラウンの髪の下の眉は凛々しく、鼻筋は通っている。切れ長の目は左下にひとつほくろがあった。
 イケメン俳優と並んでも、きっと遜色ない……いや、それよりも端整な顔立ちだと思う。

 その顔を見ると、こんなに長い時間、彼を独り占めできてしまうなんて、と考えてさらにそわそわしてしまった。


 これまで彼がマンションに戻ってきても、私が寝ている間や、起きていても1時間も経たずに家を出て行く。
 休みだってほとんどなくて、どこかに一緒に出かけたこともない。

 それは、この結婚の始まりが、普通とは少し違う事にも関係しているのかもしれないが……。


 そんな私たちが結婚一年経って、はじめて旅行に行く。
 どうしても行ってみたかったものの、ひとりでは行く勇気が出なかったパリに……。

 行ってみたいと伝えていたわけでもないのに、彼はこの旅行先としてパリを提案してくれた。
 私はすぐにその提案に頷いていた。
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