エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
「ほら、好きなもの食え」
「……あ、えっとあまり食欲ないから」
私が手を横に振って呟いたところで、ぐい、と強引に腕が引かれる。
抵抗する間もなく、食事の置いてあるテーブル前のソファで、昴さんの膝の上に座らされた。
驚いて目を見開くと、眼前で意地悪な笑顔を浮かべられる。
「食べさせてほしいだなんて、香澄はいくつになっても子どものままだな」
「そんなこと誰も言ってないですよね⁉ 自分で食べますよ。食べますから下ろしてください!」
「そうか、残念だな」
(残念、ってどういうことよ? とにかく心臓に悪すぎる……)
昴さんの膝の上から飛びのいて、距離を置いてソファに座る。
「ちゃんと食えよ」
「分かってます」
半ばやけ気味に口にオムレツを押し込むと、
ふわっとやわらかな卵が口の中に広がった。