エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
兄も昴さんと同じ一之宮総合病院の医師だ。
兄は消化器内科で、昴さんと同じ脳外科ではないけど、院内ではふたりとも独身でイケメンだと有名だった。
妹としては少し恥ずかしいけど、ほんの少し嬉しくもある。
その日の夜は珍しく二人揃ったので、いっしょに夕飯を作っていた。
兄はご飯をよそいながら、料理をしている私に話しかけてくる。
「昔から保育士になるとは言ってたけど……まさか病棟保育士になるなんてな」
最近、私が一之宮総合病院に勤めだしたばかりの頃だった。
私は保育士の資格を取り、病棟内で働く病棟保育士になったのだ。
医師や看護師の子どもを預かる院内保育士とは違い、様々な病気で入院している子どもと遊んだりコミュニケーションをとったりする仕事。医療行為はできないけど、身の回りのお世話を手伝ったり、心のケアを行ったりもする。
一年働けば、医療保育専門士も取ることができる。
「兄さんだって、なんで医師になったのよ?」
「俺は頭が良かったから、それだけだ。香澄、これくらいでいいか?」
白米の入ったお茶碗を見せられ、頷く。
自分で聞いたくせに兄は驚いた顔をした。
「まじか。わが妹ながら本当によく食うな」
「兄さんが入れたんでしょ。だって、体力勝負だし。見てると、看護師さんたちの方が体力勝負だとは思うんだけど、みんなあんまり食べないんだよね」
「香澄に比べたらみんな食べないだろうな……」
「なによ」
私のだって多いけど、兄はその二倍くらいある。
漫画かというほど盛ってあるじゃない……。