エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
それにしても仕事終わり、ふたりでこういう店で並んでご飯が食べられるなんて、恋人みたいな気分になる。
思わずニヤニヤしていると、女将さんと目が合って微笑まれた。
頬を手で覆ったとき、昴さんがいくつか料理を頼んでくれる。
最初に来たのは、賀茂なすの田楽。
赤味噌と白味噌がそれぞれのっている。さきに白味噌を一口。
「おいしっ! 白味噌、最高です!」
「だろ? 赤味噌も行けるから食べてみろ」
「はい」
味噌の甘さがそれぞれ違って、どちらも間違いなくおいしい。
もっと堪能したいのに、すぐに口の中で溶けてしまう。
そんなわけで、大きいのにふたつぺろりといけてしまった。
ふと隣を見ると、昴さんがこちらをじっと見ている。
もう学生ではないのにはしたなかったかな、と口元を抑えると、昴さんが微笑んだ。
「す、すみません。おいしすぎてつい」
「いいんだ。ほら、これも食べて」
「はい」
次々に運ばれてくる料理を食べていると、ふと昴さんが言う。
「あまり味がしないとき、そういうおいしそうな顔するやつと飯食うと安心する」
(なんでそんな嬉しい言葉、サラリと言うんだろう)
私は嬉しいけど、こんなこと言うなんてやっぱり相当疲れているんだろうな、と思った。
彼が住んでいるのは社宅じゃない一駅離れたマンションだったけど、そっちのほうにはほとんど帰れてないみたいだ。