エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 そう思って見つめていると、昴さんがお店に行って店の人と一言二言かわしてから、手にそれを持って帰ってきた。 

「つい買ってしまった。一口食べてみて」

 少し戸惑ったけど、昨日のキスを思い出して、ほのかに期待して口の中に栗を入れる。

「うまい?」

 温かい。
 温かいことや食感は分かるんだけど……。

(やっぱりだめか……)

 口角を無理に上げると「はい」と返事をする。
 昴さんは嘘だと分かっているように「そっか」とだけ呟いた。


 私は一年前、事故に遭って手術をし、それから味覚が鈍くなっていた。
 その中でも特に甘味を感じないのだ。


(でも、昨日のキスは本当に甘かったの……。あれ、何だったのかなぁ?)

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