エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
6章『1年前』
一年前――。
私が事故で頭の手術をすることになってしまい、手術後入院している時、小児科の花畑優太先生が毎日やってきてくれていろんな話をしてくれた。
優太先生は小児科でもずいぶんお世話になった先生で、子どもに優しくて人気がある。目尻を下げて笑う顔は、私より七つ年上なのに、やけに子どもみたいにかわいく見えた。
「たいがくん、すごく元気になってきたよ。香澄ちゃんのこと気にしてたから顔だけでも見せに来てあげてよ」
「でも……もう退職だけでも随分ご迷惑をおかけしてるのにのうのうと顔だけ見せに行くなんてできませんよ」
「そんなこと気にしなくていいのに」
足を骨折してしまったのもあったけど、これから先、事故の影響がどう出てくるのかわからず、私は退職を決めた。
その頃には医療保育専門士の資格も取り、ずいぶん業務にも慣れてきたところだったのだけど……。
やっぱり大切な子どもと関わる、しかもいつ何時急なことが起こるかもしれない病気の子どもたちと関わる仕事だからこそ、そんな状態での勤務はしたくなくて私は自分から退職をすることにしたのだ。