エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

「な、何言って……」
「信じられない?」
「はい」

「即答するなよ。……まぁ、そう思われるのには無理もないな。家にだってろくに戻れなかったし」

 そうだ、本当に好きなら……もっと……。
 分からないけど、もっと何かあったんじゃないのだろうか。


「それでも、少しの時間でも、香澄と過ごせて俺は良かった。一緒にいて、安心できるのも、心地いいのも香澄だけだ。それにはっきり気づけた」

 その告白に心が揺れ動かされるのは、それを言ったのが他でもない、昴さんだから。
 そして私だってそう思っていたから。

 唇を噛んで視線を逸らす。

「そ、そんなこと言われても困ります……」
「困ればいい。困って、俺のこともっと真剣に考えろ」
「なにそれ」

 好きって言ったくせに困らせてどうするのよ……。
 思わず昴さんを見つめると、昴さんは目を細めた。

「返事は日本に戻ってからでいいから」
「いえ……今返事します」

 でも、私はきっぱりと言う。

< 57 / 219 >

この作品をシェア

pagetop