エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
マンションの鍵をそっと開け、中に入ると香澄の匂いと気配がする。
すぅ、と息を吸って吐く。
この三日で初めてまともに呼吸ができた気がした。
そっと香澄の寝室を開ける。
香澄は鍵がかかる部屋なのに、本当に油断していて鍵を開けっぱなしにしている事が多い。
それに乗じて、こうして香澄を見てしまう自分も自分だと思うが、どうしても香澄がいることを確認するのを辞められなかった。顔を見るだけでやけに安心できた。
「ただいま。……寝てるか。まだ6時だもんな」
香澄を見ると、ブランケットがはだけてほっそりとした白いお腹が見えている。
思わずそのなめらかな感触を確かめたくて、そっと手を伸ばしたけど、触れる直前に手が止まる。
「さすがにまずいよな」
疲れもあり、触れてしまうと止まれない気がした。
昔から香澄といると、自分の行動が制御できないときがある。
一度、精神的に追い詰められている時期、彼女と食事に行った帰りに同意もなしにキスをしてしまったこともあった。
それでも香澄は、自分のそばから離れず、話しかけると顔を赤くして笑ってくれるので、自分はそんな香澄の優しさに甘え続けたのだ。八つも年下の香澄に……。