エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
「んっ……」
香澄が身体をよじると、そっと目を開ける。
顔がにやけていないといいな、と考えながら香澄を見ていた。
彼女は俺と目が合うと、目を丸くして恥ずかしそうにはにかんだ。
「昴さん? お、おかえりなさい」
「腹を出して寝てるなんて小学生か」
言うと、慌ててお腹を隠す。
そして目の下を赤くしてこちらを見てくる。
そんな仕草すらいちいちかわいいと思ってしまって、自分が彼女に嵌っていることをさらに自覚させられた。
「見ました?」
「見えたんだ。今日は、涎までは出ていなかった」
「今日はって!」
慌てて口元を拭いながら、顔を赤くした彼女の髪に、そっと触れた。
手の中にある髪の感触すら愛しく思う。
ふわりと彼女のシャンプーの匂いが鼻をかすめるといよいよまずいなと思って、立ち上がった。
「多少の寝坊はいいが、不規則な生活はするなよ。今日も、朝からリハビリもあるだろ」
「はい。昴さん……今日はお休みですか?」
「シャワーを浴びに帰ってきただけだ」
それだけ言って先に寝室を後にしたあと、自分の心臓が恥ずかしいくらいに脈打ってることに気が付いた。