エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
昴さんは目を細めて優しく微笑む。
笑顔にどぎまぎしていると、ソムリエがオーダーを聞きに来た。
やりとりが難しくてよくわからなかったけど、昴さんが頼んでくれたのは、アルコール度数が低めだというシャンパン。
運ばれてきたキラキラしたグラスの中身を見て、つい感嘆のため息を漏らす。
「じゃ、香澄の二十歳の誕生日と初めての酒に……」
「「乾杯」」
グラスを優しく合わせてから、はじめてのお酒を恐る恐る一口飲んでみる。
すると想像以上に、上品な甘さと爽快さが口の中を駆け抜けて行った。
「おいしい……!」
つい大きな声で言ってしまうと、昴さんの微笑みが一層深くなる。
もう一口飲んだところで、コースの前菜が運ばれてきた。
「バターナッツスクワッシュのヴルーテでございます」
ウェイターさんが行ってしまってから、気になってきて口を開く。
「ぶ、ヴルーテって?」
「フランス料理で野菜のピュレやルーをブイヨンで伸ばしたものだ。なめらかなスープという感じかもな」
「へぇ……」
(スープなの? ポタージュみたいにも見えるけど……そもそもバターなんとかもわからない)
恐る恐るスプーンですくって口に運ぶ。
ドキドキしながら、ごくん、と飲み込むと、勝手に顔が綻んだ。
「これも、おいしいです!」
「そうか」
「はい、優しい甘さって感じで。こういう甘み、大好き」
バターなんとかはカボチャみたいな風味だった。後で調べたら、やっぱりカボチャの一種だったみたい。
思わず一口、もう一口と口に運ぶ。
ふと気づいた時には、昴さんは食べずにこちらを微笑んで見ていた。
「な、なんですか……?」
「いや、昔からうまそうに食べるなと思って」
「大食いだって言ってます?」
「そういう意味で言ったんじゃないが……まぁ、大食いは否定できないな」
ハハ、と笑う昴さんの顔に声が詰まる。
少し笑うだけで絵になっちゃうんだから、この人はずるい。