エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 本来なら、こんな提案をするなんておこがましいのかもしれない。
 神也は表情をくもらせると、自分の気持ちを落ち着けるように息を吸った。

「すまない。でも、どうしても俺は家族として、香澄のほうが大事だと思ってしまうんだ」
「その気持ちはわかる」


「……だから、俺は、今でも香澄は花畑先生と一緒になればよかったと思ってるし、離婚後そうなればいいとだって思う。だから、花畑先生の味方になると決めた」

 花畑優太は先月まで一之宮総合病院の小児科にいた医師だ。
 先月から新しくできた大阪の国立こども総合医療センターに小児科医として異動した。

 一つ下だが、小児科医として腕もあって、その評判で引き抜かれた形だ。
 そして、花畑が香澄のことを好きだと言うのも、知ってはいた。

 実際、彼が告白する前に、奪うように先に契約結婚を持ち込んだのも自分だ。

 そんな花畑と神也が繋がっているとは考えていなかった。
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