エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
次々に運ばれてくる料理を食べ終わると、私は頭をさげた。
「本格的なフレンチなんて初めて食べましたけど、おいしかったです。ごちそうさまでした」
(いつか本場でも食べてみたいなぁ……)
そう思ったとき、昴さんが時計を気にしたのが見える。
「もう少しだな……」
昴さんが呟いて、もしかして忙しかっただろうか? と考えたところで、彼はウェイターにメニューを頼んだ。
何だろうと思っていると昴さんは言う。
「他も食べてみたいものがあれば食べろ。遠慮はするな」
「え、そんなに食べられな……」
「嘘だな」
分かっている、と言わんばかりに彼の口角が上がる。
さすが小さいときからの付き合いだからよくわかっている。
私は昔からよく食べる。兄もそうだ。
私はメニューを受け取り、ちらりと昴さんを見た。
「じゃ、デザートを追加しても?」
「もちろん。全種制覇してみれば? 無理そうなら手伝ってやるから」
「はい」
昴さんのこういうところが好きだ。
私に遠慮させないように誘導してくれる。
美味しいもの、綺麗な景色、心地よい空間……。
ーーそして目の前にいる好きな人。
間違いなく、最高の誕生日だと思った。