エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 そっと口をつける。
 一口口に含むと、ふわ、と甘い香りが鼻に抜けて……

 それから急にチョコレートの甘さが舌にのった。

「甘い……」
「え?」

「甘い、これ! 甘いです、昴さん!」

 思わず言って、もう一口。
 やっぱり、甘い。顔が勝手に綻んでまた一口。

 一気に飲み干した私を見て、昴さんが白い歯を見せて笑う。

「ほら、口元、ついてる」

 指で口の端を指され、すみません、と取ろうとするなり軽くキスをされた。
 一瞬すぎて周りも見ていなかっただろうけど、ぶわっと顔が熱くなる。

「あぁ、確かに甘いな」
「な、なにするんですか!」

 精いっぱいの小声で怒ると、昴さんは顔をくしゃっとさせて「本当に、よかった」と呟いた。

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