内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
彼に実家の住所を教えたことはなく、会いに来られる理由もわからず混乱した。

「久しぶり。突然押しかけてすまない。電話もメールも繋がらないから、こうするしかなかったんだ。話がしたい」

向けられる眼差しは真剣で、声には緊張しているような響きがある。

驚きのあまり騙されたことを一瞬忘れ、久しぶりに会えた喜びで心が弾みかけた。

きれいさっぱり消し去ったはずの卓也への愛情が目を覚まし、迎えに来てくれたのではないかと期待に胸が高鳴る。

抱きつきたい衝動にも駆られたが、頭の中に警笛が鳴り響いた。

(この人は私をもてあそんで捨てた人)

卓也をキッと睨んだ果歩は、二度と騙されないと心に盾を構える。

「私の方はなにも話すことがないです。帰ってください」

(今さらなにを話したいというの? 婚約者だった女性と結婚しているはず。奥さんがいるのに、私にまたちょっかいかけようとしているの? 私なら簡単に誘いに乗ると思っているんだ。馬鹿にしないでよ)

非難の言葉を心に並び立てている最中に、卓也の訪問理由に思いあたった。

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