内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
(先月、私と子供たちを助けてくれた弘田さんだ。卓也さんの友人だと言っていたもの。弘田さんから話を聞いて、自分の子供だろうかと不安になって確かめに来たのかも)

果歩の脳裏に、かつて読んだ小説が浮かんだ。

主人公は相手の奥さん公認で既婚男性と交際していた女性だった。

奥さんとは友人関係で、ひとりの男性をシェアするおかしな三角関係が続いていたある日、女性は妊娠した。

すると奥さんは喜んで出産まで献身的に女性をサポートしてくれたのだが、子供が生まれた途端に手のひらを返したように冷たくなり、自分たち夫婦が育てた方が子供のためだと言って乳飲み子を奪われた。

後から知ったのは、奥さんが子供ができにくい体質だったという事情。

夫の両親から不妊について責められて悩んでおり、夫の子供を手に入れるために主人公を利用したという少々怖いストーリーだった。

(卓也さんの子だって知られたら、奪われるかも。それは駄目。大事に育ててきたのに、私の大切なあの子たちを絶対に渡さない!)

急激な焦りと不安に襲われて、果歩は全力で卓也を押した。

「帰って。二度と来ないで!」

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