内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
先月、卓也の友人に会った時、たしか卓也がニューヨーク事業部で働いているという話をされた。

日本にいない卓也が果歩の近況を直接調べることはできないので、興信所を利用したのかもしれない。

大企業の社長令息の彼なら、高額な調査費も気にならないだろう。

子供の父親が自分だというのも確信しているようで、嘘でごまかすことができなくなった果歩は困り顔を兄に向けた。

すると兄のこめかみには青筋が立ち、目をつり上げて顔を紅潮させている。

兄には小さな頃からよく叱られてきたが、本気の怒り顔を見るのは初めてだった。

「婚約者がいる身で果歩に手を出した挙句、妊娠させて捨てた外道がお前か。よく顔を出せたな」

兄の声は低く、怒りに震えていた。

「お兄さんも果歩もどうか聞いてください。色々と誤解が――」

釈明を聞かずに兄は拳を振り下ろし、頬を殴られた卓也に果歩が悲鳴を上げた。

彼が玄関ドアに強く背をぶつけても兄の怒りは収まらず、玄関のたたきに下りて胸倉を掴み、二発目を繰り出そうとしている。

「お兄ちゃん、やめて!」

もてあそばれて捨てられても卓也が殴られていいとは少しも思えない。

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