内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
(私は卓也さんに捨てられていなかったんだ。よかった……)

しゃくり上げる果歩の隣に卓也が来て、そっと腕を回して引き寄せた。

彼のスーツの胸元に顔を押しあて、しがみつくようにして泣く果歩を、兄は無言で見守ってくれている。

耳元に卓也の温かい声が響く。

「別れる前にフレンチレストランに行く約束をしただろう。そこで果歩にプロポーズするつもりでいたんだ。ニューヨーク事業部への異動が決まり、数年帰れないのがわかっていたから、妻としてついてきてほしいと言うつもりだった」

(結婚を考えていてくれたの?)

思い返せばたしかにレストランデートに誘ってきた時の卓也の電話の声は弾んでいた。

別れの予兆は少しもなく、果歩も一度は怪しんだが結局、飛島に騙されてしまった。

「卓也さんを、信じ切れず、ごめんなさい……」

涙声で謝罪してあの日を後悔する。

すると果歩を抱きしめる腕の力が強まった。

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