内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「お兄さん、行ってきます」

「ああ、気をつけてな」

居間から出ていくふたりを座ったまま見送ってくれる兄がなにか呟いている。

「こういうタイプが好きだったのか。小さい頃、王子様が出てくる童話を夢中で読んでいたよな。本の影響か……」

その独り言に残念そうな響きがあるのは、妹が選んだ相手が自分とは違うタイプだったからだろう。

兄としての小さな嫉妬は聞こえなかったことにして、果歩は卓也と自宅を出た。

保育園は徒歩五分ほどの住宅街の中にある。

歩きながら指を絡めて手を繋がれ、鼓動が跳ねた。

隣を見れば卓也が嬉しそうに目を細めている。

「別れてからずっと夢見ていた。こうして果歩と並んで歩ける日を。やっと取り戻せた。二度と離さないから覚悟して」

「卓也さん……」

あの頃と変わらない愛を感じ、喜びで胸が震えた。

照れくさくてどんな顔をしていいのかわからなくなり、「嬉しいです」と小声で返事をして子供の話に変える。

「男の子と女の子で、新と芽依という名前です」

「どういう由来?」

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