内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
自由の女神やブロードウェイ、タイムズスクエアにメトロポリタン美術館。森ノ屋書房の書棚に陳列されていた観光ガイドブックを頭の中で開いていた果歩だが、アーアーと果歩に向けて手を伸ばす双子の声で我に返った。

「あ、ごめんね。今、抱っこするから……あっ」

果歩より先に卓也が新を抱き上げた。

体も手も果歩よりずっと大きいからか、不慣れなはずなのに抱っこが安定している。

もう一方の手に芽依も受け取った卓也は嬉しそうでもあり、泣きそうなのを我慢しているようでもあり、万感胸に迫りくるような初めて見る顔をしていた。

「新、芽依、初めまして。お父さんだよ。迎えに来るのが遅くなってごめんな」

双子は卓也を見て固まっていて、泣き出すのではとハラハラしている果歩の予想を覆し、揃って笑い声をあげた。

新は小さな手で卓也の頬をペチペチと叩き、芽依は卓也の高級ネクタイを掴んでおしゃぶりしている。

初対面の男性には近寄られただけで大泣きする双子がご機嫌なので、果歩は目を見張った。

「絶対に泣くと思っていたのに……」

「我慢できずに抱っこしてしまった。泣かなくてよかった」

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