内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
企みには企みを
卓也が果歩と再会してから三日が経つ。

今は果歩の実家に滞在しており、婚約指輪を一緒に買いに行ったり、子供たちと公園に行ったりと楽しい時間を過ごした。

しかしそう長く仕事を休んでいられず、明日の便でニューヨークに戻らなければならない。

その前に今日は重役への事業報告と本社会議があって、これから出かけるところだ。

時刻は八時十五分。

スリーピースのスーツ姿の卓也が玄関で革靴を履いていると、双子を連れた果歩が見送りに出てきた。玄関の上り口に座り、双子が落ちないよう両腕に抱えて笑顔を向けてくれる。

「卓也さん、いってらっしゃい」

その声ににじんだ微かな不安を感じ取った卓也は、果歩の頭を撫でた。

「心配いらないよ。きっちり決着をつけてくるから。俺が愛しているのは果歩だけだ。信じて待っていてくれ」

決着とは、官僚令嬢の六王寺椿姫の件である。

卓也が何度断っても母は諦めてくれないどころか、息子は奥手だから遠慮しているというストーリーを作って交際関係に持ち込ませようとしており、椿姫も乗り気なのだ。

今は卓也が海外勤務のためデート時間もないから交際は保留で、帰国後にすぐ婚約しようという話になっているらしい。

卓也の気持ちを無視した、母と椿姫の間だけの約束である。

たとえ両親に反対されても卓也は果歩を妻にすると決めているが、その件が片づかない限り入籍は許さないと果歩の兄から言われている。

そのため今日中に決着をつけようと急いでいた。

頭を撫でられて果歩が微笑む。

「信じています。ただ、私のせいで卓也さんとご両親の仲が悪くなったらどうしようと思って……」

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