内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
果歩はひとりでレジカウンターに入っており、推理小説を出した客にハッとした。

「この前、写真集をお買い上げいただいた……」

「覚えていてくれたんだ」

(忘れるわけない。かっこいい上に、私の勧めた本を買ってくれた人だもの)

その日もスーツとビジネスコート姿で凛々しい彼に微笑まれ、果歩の鼓動が二割増しで高鳴った。

頬の熱さを感じながら会計していると、気さくに話しかけてくれる。

「君のおかげで上司を納得させられる回答ができたんだ。あの写真集を勧めてくれてありがとう」

「そうなんですか! よかったです」

写真集を見たことでリラックスでき、解決法を思いついたということだろうか。

どう役立ったのかまで深く聞けないけれど、余計なお世話でなかったことにホッとして嬉しくなった。

(もしかして今日はその報告に来てくれたの? 見た目に違わず、心まで素敵な人)

「ありがとうございました」

カバーをかけた文庫本を渡して会計を終わらせたら、周囲に人がいないか気にした彼が声をひそめて果歩にメモ用紙を差し出した。

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