内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
直属の上司だった時にそのような相談を受けたことはなく、彼女の英語スキルが低いことも知っている。

もし海外で仕事がしたいと本気で思っているなら、英会話の勉強くらいするものだ。

玉の輿を狙っての適当な口実に卓也は内心うんざりし、作り笑顔で手厳しくかわす。

「一昨年の共通英語力テストを宮島さんも受けていたよね。たしか九百九十点満点中、二百点台だったと記憶しているが。海外事業部は四か所あるけど日常英会話もできないようでは務まらない。まずはテストで七百点を取れるよう努力して」

彼女の笑みがひきつったら、エレベーターが一階に到着した。

「それじゃ頑張って」と言い残し、卓也は足早に社屋を出た。

この後、人と会う約束があり、呼んでいたタクシーに乗り込んで西へと向かう。

今日は風が強いがよく晴れて、春の日差しを浴びる通行人たちの足取りが軽やかに見えた。

卓也はのんびりと春を喜んでいられず、やや硬い表情を浮かべている。

するとスーツのジャケットのポケットでスマホが震えた。

果歩からなら嬉しいが、取り出して確認すると母からで、ため息をついて電話に出た。

「なに?」

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