内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
注意が長引きそうでうんざりし、母の話を遮る。

「もうすぐ着くから切るよ。次の連絡できっといい報告ができるから楽しみにしていてくれ」

(いい報告とは、俺と果歩にとってな)

電話を切ってスマホを内ポケットにしまい、車窓を眺める。

赤信号で止まったのは有名ブランドのブティック前で、ショーウインドウには早くも夏服がディスプレイされていた。

ブランドのロゴがさりげなくデザインに溶け込んだ水色のワンピースは袖と襟にレースがあしらわれて、大人っぽさの中に少女のような可憐さも感じられた。

その隣には同じデザインの子供用Tシャツも飾られている。

(果歩と子供たちに似合いそうだ。帰りに買っていこう。だがあのTシャツは大きすぎるな。一歳前の子供のサイズも売っているだろうか?)

お揃いの服を着た三人を思い浮かべて頬を緩ませていると、タクシーはホテルのロータリーに入って正面玄関前で停車し、卓也は緊張感を取り戻した。

数年前にオープンしたこのホテルは宿泊料金がやや高めの設定で、ふたつ星のフレンチレストランや高級寿司店が入っている。

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