内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
しかし卓也に対して警戒心は働かず、それどころか恋の予感に胸が高鳴り、湧き上がる期待を抑えようと首を横に振った。

（吉川卓也さん。きっと真面目で誠実な人。私を女性として見ているわけじゃなく、お礼をしないと気がすまないだけだと思う）

大人で素敵な男性が学生にも間違われる自分に惹かれるはずないと戒めたが、動悸は静まってくれない。

学生時代に恋をしたことがあっても、残念ながら交際経験ゼロである。

恋愛小説や漫画を読むたび自分もいつかは素敵な恋をと夢見ていたこともあって、どうしても期待を消せそうになかった――。



「出会いとは不思議なものだな」

卓也が果歩の頭を撫でてしみじみと言った。

果歩の勤める書店が卓也の通勤路になければ、知り合うことはなかっただろう。

ふたりが出会うには果歩のシフトがあの日のあの時間に入っていなければならなかったし、卓也が仕事上の悩みを抱えて書店に立ち寄ろうと思う必要もあった。

「偶然が重なって果歩と出会えた。これを運命と呼ぶのかもな」

卓也が言うとキザには聞こえず、ウインクまでもらって果歩は頬を染めた。

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