内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
裏切りと懐妊
森ノ屋書房の自動ドア越しに、雨に濡れる景色を眺めた果歩は眉を寄せた。

(ずっと降ってる)

七月に入って数日が経つ。

梅雨明けはまだ先でジメジメとした蒸し暑さが不快だ。

天気が悪いと偏頭痛も起きるので、この時季は痛み止めが欠かせない。

本に囲まれて仕事をしていてもテンションが上がらないのはそのせいである。

時刻は十三時。

先ほど入荷した雑誌を書棚に並べていたら、「果歩ちゃん」と後ろから呼びかけられた。

振り向くと今日、同じ時間のシフトに入っている横沢遥(よこざわはるか)が立っていた。

栗色のショートボブが似合う三十歳のアルバイト従業員で、話しやすい女性である。

「その仕事、代わるね。お昼どうぞ」

十二時から一時間の休憩を終えた遥と入れ替わりで、これから果歩の昼休みが始まる。

「ありがとうございます。あ、遥さん、口の横にソースがついてますよ」

「やだ恥ずかしい。お昼にハンバーガー買ってきて食べたんだ。取れた?」

遥が慌ててハンカチで口元を拭って果歩がOKサインを出し、ふたりで笑った。

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