内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
卓也の大人の魅力にどっぷり溺れている果歩は、交際の先にあるウエディングベルを夢見ていた。

その鐘が頭の中で鳴り響き、期待が大きく膨らむ。

(待って、期待しすぎて違ったらがっかりしてしまう。落ち着いて冷静に。私は大人なんだから……でもでも!)

心は浮足立ち、休憩時間が終わって仕事に戻っても頬が緩んだままだ。

レジカウンター内にいる果歩に、四十代くらいに見える男性客が成人向け雑誌を持ってきた。

果歩が照れたり、あるいは嫌そうにするのを期待しているかのようにニヤニヤと嫌な目つきをしている。

この男性のように若い女性がレジに入っている時を狙って、十八歳以上の年齢制限のある漫画や雑誌を会計に出す客がたまにいるけれど、肌を大きく露出させた色気ムンムンの女性が大胆なポーズをとっている表紙を見ても果歩は恥ずかしいと思わない。

書店員として働いて三年目に突入した今は、すっかり見慣れてしまった。

「四百五十円になります。有料の袋はご入り用でしょうか?」

「い、いや……」

男性客がニヤつくのをやめて戸惑っているのは果歩が平気そうにしているからではない。

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