内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
テレビ前にあぐらをかいて座っていた兄は立ち上がり、玉のれんの向こうの台所に向かう。

八畳の居間は色あせた絨毯敷きで、和風の吊り下がり照明にこたつ、すりガラスの窓際には茶色のソファが置いてある。

夏なのでこたつ布団はしまっているが、一年を通してテーブルはそのままで、家族はここで食事をしてきた。

テーブルには骨董品の域に入りそうな花柄保温ポットと、せんべいやクッキーなどの菓子を入れた海苔の缶があり、缶には果歩が子供の頃に貼ったシールが今もそのままにされている。

その横に兄が冷たい麦茶を置いてくれた。

麦茶のグラスもキャラクターの描かれた年代物で、果歩が小さな頃から使っている。

実家に帰ってくるとホッとして、母の声が聞けないのが寂しくもある。

居間の隣の六畳の和室には仏壇があり、祖父母と母の遺影写真が並んで壁に掛けられていた。

来る前に買ってきた桃を供えて線香を上げ、心の中で母に妊娠を報告した。

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