内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
フラれたのは俺の方
日星製薬は国内外に二十一の子会社や関係機関を持ち、昨年の売り上げは一兆円を優に超す大企業だ。

東京のオフィスビル街に十五階建ての巨大な自社ビルがあり、その本社の従業員数は二千人近い。

今は夏真っ盛りで盆の入りは近く、数日後に一週間ほどの夏季休暇に入る。

その前に仕事を進めておかなくてはと、社内には年度末のような慌ただしさがあった。

ネイビースーツを着た卓也は、ノートパソコンを抱えて三階の廊下を進む。

先ほど会議を終え、自分が統括する第一事業部に戻る途中なのだが、眉間には軽く皺が刻まれている。

すれ違う社員が皆、卓也に会釈するのは、社長の息子だからだろう。

遠くない未来にこの大企業の重役の椅子が待っており、三十二歳の若さで部長職に就いているのもそれ以外に理由はない。

けれどもそのプレッシャーに耐えるのは生易しいものではなく、人一倍努力してきたつもりだ。

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