内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
若輩者に上に立たれるのを快く思わない社員もいたが、頭脳明晰で仕事の処理能力も高い卓也は、数年かかって古株の社員にも認められるようになった。

努力の成果が実を結び、以前より指示が通りやすくなったのを実感している。

しかしここ一か月ほど、絶不調である。

第一事業部の入口が見えたところで無意識にため息をついたら、後ろから笑い交じりの声をかけられた。

「でかいため息だな。プロジェクト案を重役に否決されたのか? それとも例のプライベートの件?」

隣に並んだ社員は、弘田和樹(ひろたかずき)。

中高一貫校で机を並べた仲で、それ以降も親しい付き合いをしている。

友人で同部署の係長職でもある和樹は卓也の部下であり、他の社員の前では敬語で話すが、ふたりきりの時は自然と砕けた口調になる。

社長以下、重役複数人が出席する会議に和樹は参加していない。

長袖ワイシャツを肘まで折り返した和樹にからかうように問われたため、卓也は横目で睨んだ。

「両方」

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