内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
卓也との恋愛はすでに過去のものだと割り切っていた。

双子を出産した時に命の重みをひしひしと感じ、泣いてなんかいられないと前を向いた。

母として強くならなければという気持ちと、育児に忙殺される日々が、失恋の痛手を消してくれたのだ。

離乳食をなんとか食べさせてミルクも飲ませたら、洗濯機が鳴った。

双子の周りにおもちゃを置いて、夢中になっている隙にと急いで洗濯物を干す。

しかし、ハイハイで追ってきた双子に阻まれ、家事は中断の連続だ。

(最近、後追いがすごい。ベビーサークルに入れたら大泣きするし、ひとりならおんぶして家事をするけど双子だし)

「これが終わったら遊ぼう。待っててね。うーん、駄目か」

ふたりだけで遊べるようになるのはいつ頃か。

今はまだ間に大人が入らないと上手に遊べない双子である。

洗濯物干し場は洗面所前の廊下だ。

足にすがりつかれて困っていたら、スウェット姿の兄があくびをしながら階段を下りてきた。

「おはよう」

「お兄ちゃん、おはよう。まだ九時だよ。せっかくのお休みなんだから、ゆっくり寝ていていいのに」

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