内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
泣かれて大変な目に遭うのをわかっていながら、兄はあえて簡単そうに言ってくれる。

病院や美容室に行きたい時はお願いするが、日常的な買い物の時まで迷惑をかけられないと果歩は断った。

「今日はそんなに買うものないんだ。散歩もさせたいし、ベビーカーで行ってくるね」

双子用のベビーカーは出産祝いに森ノ屋書房のみんなが連名で送ってくれたものだ。

左に新、右に芽依を乗せて近くのスーパーマーケットへ向かう。

街路樹は葉を芽吹き、チューリップや水仙が咲いていた。

二車線の道路沿いの歩道は狭く、アスファルトはつぎはぎでベビーカーを押しにくいが、双子はでこぼこ道の揺れにキャッキャと嬉しそうだ。

のんびり歩いていると、道沿いのたい焼き屋から美味しそうな香りが漂ってきた。

兄へのお土産にしようと思い立ち、あんことクリームをふたつずつ注文する。

たい焼きの紙袋を受け取った後に、帰り道で買った方が温かいうちにあげられると気づいて苦笑した。

双子は楽しそうにアーアーと声をあげている。

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