内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「警察を呼びますよ!」

気づけばそう叫んでいて、男は危害を加えることなく舌打ちして去った。

なにもわかっていない子供たちは、母親に抱きしめられてはしゃいだ声をあげている。

「もう大丈夫だよ」

優しい声をかけられてホッとした果歩は、立ち上がると深々と頭を下げた。

「助けてくださってありがとうございました。なにかお礼をさせてください」

「いや、お礼されるほどのことはしていないよ」

「それじゃ私の気がすみません。そうだ、このたい焼きもらっていただけませんか? あんことチョコクリームです」

「チョコ……ひとつだけ、いただこうかな」

彼はチョコクリームのたい焼きを紙袋の中から取り出し、その場ですぐに食べ始める。

美味しそうに頬張りながら、視線をベビーカーに向けた。

「双子ちゃん? そっくりで可愛いな。何か月?」

「十か月になったところです」

スポーティーなカジュアルウェアを着た彼は、初対面でも気さくに話してくれる。

なぜか卓也と重なって見え、鼓動が跳ねた。

年齢が同じくらいなのと、彼が手に持っているビジネススーツが卓也を連想させたのかもしれない。

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