内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
ベビーカーを押して逃げるように先を急ぎながら、様々な感情が渦巻く心を落ち着けようとしていた。

(私と別れて落ち込んでいたってどういうこと? 私を捨てたのは卓也さんなのに。やっぱり関係を清算しなければよかったって後悔していたの? なんて勝手な人。そんな人に会いたいと思っては駄目。生まれた後だから堕ろせとは言われないけど、この子たちの存在は教えない。やっと前を向けるようになったのに、今さら私の心をかき乱さないで)

卓也の友人は追ってこないが、かなり離れても背中に刺さるような視線を感じていた。


* * *


摩天楼とはよくいったものだ。

マンハッタンの高層ビルは百階を超えるものもあり、日星製薬本社の自社ビルが小さく思える。

様々な企業が入るオフィスビルの四十二階の一角に、卓也が指揮を執るニューヨーク事業部がある。

窓から見えるのは隣のビルの窓明かりのみ。

観光ポスターにあるような高層ビル群の夜景を楽しみたいなら、展望台に上がるしかない。

それほど広くないオフィスには、フリーアドレスデスクが三十席ある。

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