内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「まだ申請を入力していないのですが、来週のこの日、休んでいいですか?」

有給は社員の権利なので「いいよ」と即答したけれど、内心では時期を考えてほしいと思っていた。

今は処理しなければならない案件が多く、忙しいのだ。

クレイが嬉しそうな顔をする。

「その日は姪っ子の三歳の誕生日なんです。盛大なパーティーを開くから参加してと姉に誘われました」

「それはおめでとう。クレイの家族もニューヨークにいるのか。てっきり君の出身地、ネブラスカ州に実家があると思っていた」

以前、友人とルームシェアしている話を聞いた覚えがあり、穀倉地帯の田舎からひとりで上京したのだろうと想像していた。

クレイが笑って否定する。

「両親も姉一家もネブラスカですよ。誕生日パーティーはオンラインで参加します。遠いから日帰りは無理なので」

「そうか。すまないな」

クレイが連休で申請しなかったのは、仕事を気遣ってのことだろう。

多忙な時期の有給申請を快く思えなかったことを反省したが、彼に首を傾げられた。

なぜ卓也が謝るのかと言いたげな顔をしているので、最初から帰るつもりはなかったのかもしれない。

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