内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
しかし通勤用の鞄はデスクに残したままで、近くのカフェで簡単に夕食をすませたら戻って仕事をするつもりでいた。

エレベーターで一階まで降り、ビルの外へ出ると寒さに体を震わせてコートの襟を立てた。

季節も気温も東京と大差ないが、まだ冬と言える三月初旬は東京より乾燥して冷気が肌を刺す。

加えてビル風が強く、日没後の体感気温はマイナスである。

卓也はワンブロック先にある行きつけのカフェを目指して速足で歩いた。

ニューヨークには結構な数の和食料理店があり、どうしても食べたい時には行くが、大抵は近場のカフェですます。

自炊も時にはするけれど、自分のためだけに料理をするのが面倒で外食が多い。

すぐに着いたカフェは表通りに面したビルの一階にあり、スタイリッシュな雰囲気だ。

仕事帰りと思われる人で店内の半分の席が埋まっていた。

奥のふたり掛け用のテーブルに座った卓也は、メニューを見ずにパストラミのサンドイッチとコーヒーを注文する。

待っている間にポケットからスマホを出し、経済ニュースを閲覧するつもりが、つい写真ホルダを開いてしまった。

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