内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
一昨年の春、花見デートをした際の写真で、桜の花びらを髪につけた果歩が眩しい笑顔を向けている。

(日本時間は七時半か。果歩はきっと出勤の準備をしているな。森ノ屋書房を辞めてどこに勤めているのか知らないが、本にかかわる仕事だろう)

他の男に養われているとは思いたくない。

さすがに失恋の痛みは引いたが、果歩への愛情は少しも減らない。

時間ができると果歩の近況を想像し、日本時間を計算するのが習慣になっていた。

(写真を撮った時から二年ほど経ったな。果歩はどんな女性になっているのだろう。会いたい……)

サンドイッチとコーヒーが運ばれてきてスマホを置こうとしたら、電話がかかってきた。

友人であり、前部署の部下でもある弘田和樹の名に目を瞬かせる。

和樹と話すのは日本を発って以来だ。

何度か会議のために帰国しているが、スケジュールに余裕がなく会えなかった。

お互いにメールや電話でこまめに近況報告するような性格ではないので、気づけば随分とご無沙汰になっていた。

(まさか声が聞きたくなったとは言われないだろう。なにか用があっての電話だと思うが……)

< 92 / 157 >

この作品をシェア

pagetop