内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「そこまでじゃないが、たしかに困る要求をされたことはあるよ。若い上司だから話しやすくていいというのを褒め言葉だとは思っていない。信頼関係と円滑なコミュニケーション、それと〝なめられない〟というのを両立させるのは難しい。日々バランスを探っている。まぁ、なんとかやれていると思う。心配させてすまないな」

日本時間は七時半を回ったところで、朝っぱらからそれを気にかけて電話してきたとは思えない。

コーヒーをひと口飲んでから、「用はそれか?」と尋ねたら、『まさか』と笑われた。

その後に和樹の声のトーンが落ちる。

『言おうか言うまいか、数日迷っていたんだけど……』

珍しく前置きしてから妙に深刻そうに話しだす。

『この前の土曜に偶然、果歩ちゃんに会ったんだ』

卓也の心臓が大きく波打ち、スマホを握る手に力がこもる。

果歩の近況を知れると喜んだ後には、もしかしたらこれがきっかけでよりを戻せるかもしれないとの期待が膨らんだ。

「話をした? 果歩は今どこでなにをしているんだ?」

矢継ぎ早に問いかけてしまい、『落ち着けよ』と注意される。

『順を追って話すから』

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