陰黒のプシュケ
それは告白の夜に…
「…そうか。穂里恵も大変な目に遭ったんだな。お父さんやお母さんは何もできなくて済まなかった。でもよかった…、無事に戻れて…」
「あなた…、今の話、全部本当のことだと信じちゃってるの?私はとても鵜呑みにできないわ。だって、穂里恵はそこで熟睡してたのよ。スヤスヤと寝息たてて…。芙美と美優も、この子が夢にうなされてる様子はなかったって、そう言ってたし…」
日曜日の昼前…、リビングテーブルをはさんで、両親を前に穂里恵はあの夜の恐ろしい体験については、”そのまんま”で二人に告げた。
その結果、先祖の寳來を含め、それこそ穂里恵の話をまるごと信じてくれた父に対し、母親の絵里は、あくまで悪い夢でも見ていたのだろうと、一刀両断の体だった。
***
”まあ、お母さんはこんなもんでしょ。私だって、人からこんな話されたら、同じこと思うよ。お父さんが理解してくれたんだから、今日はこれでいい…”
穂里恵がそう”納得”しているのをその表情で汲みとれた父の実樹雄は、苦笑いして、あえて絵里にはこの件での”持論”を控えた。
そのあと3人は、別の話題で昼食まで、しばし和やかな歓談の時を過ごした。
この日の昼食は、親子5人全員でいつも通り、終始笑いが飛び交う賑やかな場でとなった。
昼食の後…、穂里恵が2階の自室に戻ってしばらくすると…、実樹雄がドアをノックしてきた。
「ああ…、おとうさん。入って」
「お父さん、ちょっと、ゴルフの打ちっぱなし行ってくるわ。で…、穂里恵、さっきの話だが…」
「うん…。お父さん、私の話、信じてくれたんだよね?」
「ああ。それで、手とか足がそれぞれ1か所捥げた4人の霊らしきやつ…、本当に何か心当たりとかないんだな?」
「今んとこね。もしかしたら、何か接触っていうか、キッカケみたいなことがあったかもしれないけど…。もう少し、思い返してみるつもり…」
「そうだな。お父さんには、4人のうち一人ってことがなんか気にかかってな。仮に、その霊にお前が何かの恨みを買う因果などないとしたら、ちょっとした接点でお前が選ばれた可能性もあるかなとね」
「選ばれた…、か。…お父さん、じゃあ、ほかの3体もそれぞれ、誰かを選んでるって…、そういうこともアリっていうこと?」
「アリだと思う。要は、もう穂里恵がつき纏われなけりゃ、お父さんはそれでいいんだが…。もし、ちょっとでも何か思いだしたり、わかったこととかがあったら、すぐ教えてくれな」
「わかった。お父さん…、ありがとうね」
実樹雄はにこっと笑みを浮かべて、部屋を出ていった。
この時…、二人は、ある同じ思いを共有していた。
***
それは2つ…。
まずは、原因が何であれ、はたして4人の霊はもうこれっきりで、愛する娘の穂里恵とはこれで終わったのか否か。
もう1点は、そもそも彼女が”選ばれた理由、根拠…”、そして、その解こそが彼ら彼女らの正体をつかむことにつながると…。
もっとも、穂里恵と実樹雄ともに、この答えはいずれもすぐには訪れないと見込んでいた。
ところが…、であった!
この日の夜…、後者の問いかけに対する大きな手掛かりが判明するのだった。
それは、夕食を終えた夜10時前のテレビから流れるニュースの一報が広石家のリビングに届いた時となる…。
「あなた…、今の話、全部本当のことだと信じちゃってるの?私はとても鵜呑みにできないわ。だって、穂里恵はそこで熟睡してたのよ。スヤスヤと寝息たてて…。芙美と美優も、この子が夢にうなされてる様子はなかったって、そう言ってたし…」
日曜日の昼前…、リビングテーブルをはさんで、両親を前に穂里恵はあの夜の恐ろしい体験については、”そのまんま”で二人に告げた。
その結果、先祖の寳來を含め、それこそ穂里恵の話をまるごと信じてくれた父に対し、母親の絵里は、あくまで悪い夢でも見ていたのだろうと、一刀両断の体だった。
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”まあ、お母さんはこんなもんでしょ。私だって、人からこんな話されたら、同じこと思うよ。お父さんが理解してくれたんだから、今日はこれでいい…”
穂里恵がそう”納得”しているのをその表情で汲みとれた父の実樹雄は、苦笑いして、あえて絵里にはこの件での”持論”を控えた。
そのあと3人は、別の話題で昼食まで、しばし和やかな歓談の時を過ごした。
この日の昼食は、親子5人全員でいつも通り、終始笑いが飛び交う賑やかな場でとなった。
昼食の後…、穂里恵が2階の自室に戻ってしばらくすると…、実樹雄がドアをノックしてきた。
「ああ…、おとうさん。入って」
「お父さん、ちょっと、ゴルフの打ちっぱなし行ってくるわ。で…、穂里恵、さっきの話だが…」
「うん…。お父さん、私の話、信じてくれたんだよね?」
「ああ。それで、手とか足がそれぞれ1か所捥げた4人の霊らしきやつ…、本当に何か心当たりとかないんだな?」
「今んとこね。もしかしたら、何か接触っていうか、キッカケみたいなことがあったかもしれないけど…。もう少し、思い返してみるつもり…」
「そうだな。お父さんには、4人のうち一人ってことがなんか気にかかってな。仮に、その霊にお前が何かの恨みを買う因果などないとしたら、ちょっとした接点でお前が選ばれた可能性もあるかなとね」
「選ばれた…、か。…お父さん、じゃあ、ほかの3体もそれぞれ、誰かを選んでるって…、そういうこともアリっていうこと?」
「アリだと思う。要は、もう穂里恵がつき纏われなけりゃ、お父さんはそれでいいんだが…。もし、ちょっとでも何か思いだしたり、わかったこととかがあったら、すぐ教えてくれな」
「わかった。お父さん…、ありがとうね」
実樹雄はにこっと笑みを浮かべて、部屋を出ていった。
この時…、二人は、ある同じ思いを共有していた。
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それは2つ…。
まずは、原因が何であれ、はたして4人の霊はもうこれっきりで、愛する娘の穂里恵とはこれで終わったのか否か。
もう1点は、そもそも彼女が”選ばれた理由、根拠…”、そして、その解こそが彼ら彼女らの正体をつかむことにつながると…。
もっとも、穂里恵と実樹雄ともに、この答えはいずれもすぐには訪れないと見込んでいた。
ところが…、であった!
この日の夜…、後者の問いかけに対する大きな手掛かりが判明するのだった。
それは、夕食を終えた夜10時前のテレビから流れるニュースの一報が広石家のリビングに届いた時となる…。