陰黒のプシュケ

この指とまれ!

その怪しいサイトは”この指とまれ!”…。

もともとは掲示板スタイルであったが、スレッドの上げネタを限りなく絞っていたため、アカウントを持ったユーザーもわずかな数というトホホなサイトではあった。

もっとも、ココでの集約カテゴリーはいわゆる反体制・集団自殺・極シニカルといった、”偏狭な危険思想”の交流の場として特化させており、世の中に対しての不平不満をダイレクトにぶち上げられ、同志を集える…、そんな一面でマイノリティー・ムーブメントは形成していたと言えた。

そのココロは、まさに究極たたるアングラサークルの創出サイト…。

***

ここに、若者4人が集結した極思想のサークルがある。

この、”この指とまれ”で誕生したサークルの声掛け人、浦田ノブトは、約半年かけて生死を超えた決起を共にできるナカマ3人を得た。

「…今の世を生きてる人間は99%、偽善者だ。正真正銘の…。ごく一握りの持てる者、恵まれし輩のみが自己都合を自己満足の押し型にすっぽりはめ込んで、国境を越え世界をまわしてる。そんな腐ったこの現代社会で、人それぞれの自己内完全燃焼を遂げる気概を結集させれば、その果実は爆発的な発信余白と突破臨界のタメ力を得ることができるはず。…ぜひ、君たち3人とはその悲願を共に達したいんだ!」

ある大雪の夜、この決死宣言の場に揃ったメンバーは高城ユキノ、赤川ヒロキ、越沢ミワの3人…。
ノブトを含めていずれも20代で、もはや全世界共有フレームを勝ち取ったた弱肉強食のグローバルシステムには憎悪の一念を以って、”玉砕”たるその純心はゆるぎない4人の共有認識を成し、すでに然るべき勇躍行動のプランを後押ししていた。

***

「…越沢さん、私は浦田さんと生死を超える決心に至ったわ。あなたも、赤川さんと覚悟を確立して欲しい!そして、4人で団塊となりましょう!」

「うん…。でも、正直、最後の決断に踏み切れていないの。不安…、心残り、いろいろあるわ、当然でしょ?彼もそんなところだと思う」

「そこを乗り切って!私達みたいな底辺の人間は先が知れてるわ。すべてを犠牲にして今の社会で手に入れた見せかけの幸せがよ、吐き気を催すほどの偽善の土台上に成り立っている前提を悟った限り、玉砕で完全燃焼することこそ、この世に生を受けた証を全うできるのよ!」

ユキノの言葉は力強く、ミワの迷いなどどこかへ吹き飛ばさんばかりの迫力を有してはいた…。

極論として4人は、絶望からの奇跡的脱却を盲目的として極解釈し、自己陶酔していたに過ぎなかったのでだろう。
だが…、いかに歪んだ陰なる光とは言え、4人で目指した究極の目的を達成させんとする発力はマックスに達していた。

かくて、尋常ならぬ死を超える偏狂極まったかく儀式は、その病んだ4人の熱い意志の下、決行のレールをひた走ってゆくのだった。

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