陰黒のプシュケ
禁なるシンパシー
禁なるシンパシー
”こんな私の苦悩を告白したら、赤川さんは包み込むような笑顔で答えてくれたわ。彼だって憤慨やるせないはずなのに、そうだそうだって同調よりも、まずはやさしさを私にくれた。絶望しか見えていない人が、こんなにも素敵な心のスマイルを人に送れるなんて…。額にできた数センチのおできを撫でながら…。私は経験したことのない衝撃と驚きを得たわ。そして私は、彼からの決意を受取ったのよ…”
「…越沢さん、オレはこのままだと、完全敗北者のまま終わってしまう。こうとなっては、究極の大逆転しかない。少なくとも、浦田さんのアプローチはマイオセロゲームと思えるんだ。このラストチャンスを逃したくない気持ちが、君と巡り合って劇的に高まったよ。世の中に絶望した上で、”完全燃焼”が視野に入ってくるなんて…、オレみたいな境遇の負け組人間ではあり得ない。だから…」
「でも、要は自ら命を絶つのよ。自殺は人間の尊厳を自分自身で踏みにじる、卑しい身勝手な行為だと思う。そこに踏み切るの、躊躇はあるでしょ?」
「君と一緒ならない…。なぜか言い切れるんだ、今のオレには…」
「赤川さん…。私も、50人近い”リバイアサン”のアカウントメンバーから、浦田さんに最終局面のメンバーに選ばれて正直、嬉しかった。私の中のまだ萎え果てていないホンキを見つけてくれてありがとうだったよ。そこの到達点にいたのがあなただったけど、私は赤川さんを包み込みたくてたまらなかった。自分で敗北者と烙印を押しても、まだあなたは戦ってるってわかったの」
「戦いか…。自分なりの意地を捨てたままで死ねない…、そんなレベルだったけど、浦田さんの言うように、互いにここまで理解し合えた人間がカタマリになれればさ、変異を遂げられると考えられるようになったんだろうね。こんな集まりの場がなかったら、自分なんか、何度生まれ変わっても人とつながる昇天感など味わえなかっただろうから」
「私でいいのね、じゃあ…?私と地獄の底まで一緒してくれる気持ち…、本当なのね?」
「越沢さん…、オレには君しかいない。どんなに幸せに人生を過ごせた人も、巨額な富を築いたり世界中の人から尊敬されてる人も、一度は言語に絶する苦痛を以って死の壁を乗り越えるんだ。なら自分は、それを自らの意思で何かの望みをって…、絶対完遂できる信念を抱きながらで乗り越えたい。どんな修羅場であっても…」
ここに至り、彼はきっぱりだった。
***
これに対し、越沢ミワも最後の一線を超えたように、力強く返答した。
「わかったわ!…我が命を失った後に、この現世に何らかの風を送り込みたい…、何かの一撃を与えたい…、そこを共通の望みとして共有し、一緒に邁進しましょう、赤川さん。私はあなたとつながりながら、この肉体を切り捨てるわ!それがとてつもない苦痛を伴おうとも…」
赤川ヒロキと越沢ミワも、ノブト&ユキノ同様、生死をまたいだ究極の自刃劇を決行するカクゴはとうにできていたのだが…。
最後の最後での勇気…、踏ん切りはやはり確かなラストハードルとなっていた。
だが、4人であの四方を囲わなければ奇跡の黄泉がえりは成し得ないという、ノブトの計画意図が、最終決断の場で二人の背中を押した。
かくて、それぞれが内包する憎悪に近い社会への屈折したリベンジは、おぞましき形態を以ってカウントダウンを迎える…。
”こんな私の苦悩を告白したら、赤川さんは包み込むような笑顔で答えてくれたわ。彼だって憤慨やるせないはずなのに、そうだそうだって同調よりも、まずはやさしさを私にくれた。絶望しか見えていない人が、こんなにも素敵な心のスマイルを人に送れるなんて…。額にできた数センチのおできを撫でながら…。私は経験したことのない衝撃と驚きを得たわ。そして私は、彼からの決意を受取ったのよ…”
「…越沢さん、オレはこのままだと、完全敗北者のまま終わってしまう。こうとなっては、究極の大逆転しかない。少なくとも、浦田さんのアプローチはマイオセロゲームと思えるんだ。このラストチャンスを逃したくない気持ちが、君と巡り合って劇的に高まったよ。世の中に絶望した上で、”完全燃焼”が視野に入ってくるなんて…、オレみたいな境遇の負け組人間ではあり得ない。だから…」
「でも、要は自ら命を絶つのよ。自殺は人間の尊厳を自分自身で踏みにじる、卑しい身勝手な行為だと思う。そこに踏み切るの、躊躇はあるでしょ?」
「君と一緒ならない…。なぜか言い切れるんだ、今のオレには…」
「赤川さん…。私も、50人近い”リバイアサン”のアカウントメンバーから、浦田さんに最終局面のメンバーに選ばれて正直、嬉しかった。私の中のまだ萎え果てていないホンキを見つけてくれてありがとうだったよ。そこの到達点にいたのがあなただったけど、私は赤川さんを包み込みたくてたまらなかった。自分で敗北者と烙印を押しても、まだあなたは戦ってるってわかったの」
「戦いか…。自分なりの意地を捨てたままで死ねない…、そんなレベルだったけど、浦田さんの言うように、互いにここまで理解し合えた人間がカタマリになれればさ、変異を遂げられると考えられるようになったんだろうね。こんな集まりの場がなかったら、自分なんか、何度生まれ変わっても人とつながる昇天感など味わえなかっただろうから」
「私でいいのね、じゃあ…?私と地獄の底まで一緒してくれる気持ち…、本当なのね?」
「越沢さん…、オレには君しかいない。どんなに幸せに人生を過ごせた人も、巨額な富を築いたり世界中の人から尊敬されてる人も、一度は言語に絶する苦痛を以って死の壁を乗り越えるんだ。なら自分は、それを自らの意思で何かの望みをって…、絶対完遂できる信念を抱きながらで乗り越えたい。どんな修羅場であっても…」
ここに至り、彼はきっぱりだった。
***
これに対し、越沢ミワも最後の一線を超えたように、力強く返答した。
「わかったわ!…我が命を失った後に、この現世に何らかの風を送り込みたい…、何かの一撃を与えたい…、そこを共通の望みとして共有し、一緒に邁進しましょう、赤川さん。私はあなたとつながりながら、この肉体を切り捨てるわ!それがとてつもない苦痛を伴おうとも…」
赤川ヒロキと越沢ミワも、ノブト&ユキノ同様、生死をまたいだ究極の自刃劇を決行するカクゴはとうにできていたのだが…。
最後の最後での勇気…、踏ん切りはやはり確かなラストハードルとなっていた。
だが、4人であの四方を囲わなければ奇跡の黄泉がえりは成し得ないという、ノブトの計画意図が、最終決断の場で二人の背中を押した。
かくて、それぞれが内包する憎悪に近い社会への屈折したリベンジは、おぞましき形態を以ってカウントダウンを迎える…。