陰黒のプシュケ

黄泉がえり?

『…本日早朝、岡山県○○町の湖沼近くで男女3人の遺体が発見されました。…中略…警察の調べでは、3人の遺体はそれぞれ片腕片足が一か所切断されており、肩のあたりまで埋まっていたようです。すでに所持品から3人とも身元の確認が付いていることから、間もなく発表される見通しです。今後警察では、殺人乃至は死体遺棄事件として捜査を進める方針です…』

”テレビでは濁していたけど、映像の様子からすると四辺様の三方に3人の遺体が埋められていたみたいだ。それぞれ足か腕を一本ずつ切断されて…。ううん…、報道の表現だと、鋭利な刃物で切断されたんじゃなく、捥ぎちぎったようだって、そんな言い回しだった。そうなると、生身の人間じゃ無理でしょ!”

既に生馬月美は、おぼろげな確信を得ていた。

”あそこから発していた霊気よ!悪霊が3人の四肢をもぎ取って、四辺様に埋めたんだわ!でも…”

ここで月美のポケットに入っていたスマホが着信音を告げ、初枝の兄マサトとの会話となる…。

***

「…なら、月美ちゃんは、この世のモノ以外の仕業だって…、そういう見解なんだね?」

「はい…」

「ふう…。まあ、テレビもはっきりとは言ってないが、腕と足、刃物じゃないってニュアンスだったからね。んなら、引っ張ってもぎ取りとかになるし…。フツーの人間がどうやってだよってなっちゃう。まあ、トラック2台とかで引っ張って引きちぎるってことは可能だろうけど…。でも、キミは悪霊に呪い殺されて四辺井戸の周りに埋められたと…。ご丁寧に腕乃至は足なしで…」

「それ…、ほかの人に言っても信じてくれないと思いますよ。初枝だって…」

「まあね。ただ、これからいやでも耳に入るしな…。この辺りに住んでりゃ、結局はある程度みんな察するさ。…それで、”悪霊さんら”がどんな”動機”で犯行に及んだかしらんが、四辺様の各角に殺した人間を埋め込むんなら、4っつだろ?一体、足んねーじゃんって思うんだけど、月美ちゃんはどう?」

「ちょうど、私もそのことを考えていたんです。霊の仕業なら、今回は四辺に4人を埋める”つもり”だったんじゃないかって…」

「うーん…、そうなると、悪霊さんたち、一人ヤリ損ねたか…」

マサトのこの言葉は、ある意味、月美にとって目からうろこではあった。

***

”そうだよ!要は、4人を四辺様に捧げる目論見だったけど、そのうち一人は、少なくとも同時にあそこへ埋めることができなかった…。こういう儀式的な蛮行なら、いくら霊のやることでも、後から遅れてってのは考えずらいと思うけど…。でも、その4人目の人…、埋められなかっただけで、すでに殺されてるか四肢の一部を捥がれてるって可能性はあるわ…”

月美にはここまですんなりと、アタマの整理がついた。
そうなれば、次は発見された3人の死体の身元になる。
3人に何らかの共通点が見いだされれば、もう一人の浮かびだしへのとっかかりにもつながる…。

月美はなぜか、強い使命感のような思いから、おぞましき霊のカタマリに”接近”してゆくのだった…。






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