陰黒のプシュケ

浮遊する4体のカオ

やがて、その変体の過程はそれまでの静寂を破る。

どこまでも深く黒い闇を貫くカゲはいつの間にか、見る見るうちに新たな浮遊物を複数カタチづかせているではないか!
しかも、かすかな音感を伴って…。

それは、音というよりも微々な響き…、声というものに近かったかも知れない。
穂里恵の脳裏に届くその声らしき響きは、”あ”に濁点を添えたような、まさに表現のできないくらいの生おぞましい呻きそのものであった。

そう…、それは人間の苦しみに満ちた、怨み訴えるような絶望音…。

”怖い‼助けて…”

一方の穂里恵も今自分の陥ってるこの不条理に対し、切なる訴えを今いる空間に必死で放っている。
だが、それは実にあえなく絶望の闇に吸い込まれ、音にも響きにもなることを却下されるだけであった。

そして、その最中、穂里恵は呻きの主らしきモノを察知する…。

”えっ…‼顔…、カオ⁉”

早くも彼女は、”その先”が暗澹たる帰結と踏まえざるを得ない状況下を悟った。

***

黒いくぼみは明らかに人の目と口を形成し、蒸気のように絶えず蠢いている。
忌まわしきカオと化した闇の中の浮遊体は、どんよりとくねりながら互いを交差させ、その目らしきくぼみはただ一点…、眼下の少女へ定まっていた。

”あ(+濁点)~~~”

例えようのないもの凄まじい闇人のカオたちは、地獄での合唱さながらだった…。
さらに穂里恵は悟った。

どうやら4体いると…!






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