陰黒のプシュケ

滴る腐った血

”やばい!!変なとこに連れ去られたよ～‼助けてーー‼”

穂里恵はその五感で即、おそらくは最終局面であろう異変を捉えていた。
４つの胴体を包みこんでいる後方の闇が前面に移動し、そのうちの一体からどろどろと腐った血が湧き出ていると…。

”女の人だ…！やめて…、やめてってら‼来ないで～～!!!”

彼女の声にならない懇願という名の超絶レベルの大絶叫は、湧き出る血が淡々と吸い込んでいく。
これから何が始まるか…。
穂里恵はいやでも察することができた。

”あの血が私に触れたら持っていかれる…！何で私なのよー⁉やだ～～!!誰か―!!こいつらを追い払って～～!!!”

その腐った血を浴びたら最後…。
まさしく絶対絶命の時を自覚していながらも、ごく平凡な少女には、見覚えもなにもないおぞましい闇人に見初められたことなど、断固として認めることなどできない…！、という結論に行き着く。

この確たる怒りと理不尽な死霊らしき来訪者（誘拐犯？）を拒絶しようとする強い意志は、全く動くことのできない彼女の体内で爆発していた。
それは何度も何度も、何度も…。