愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 当の真紘は、初めての場所と大人たちに囲まれ泣きはしないもののずっと緊張しているのが伝わってきた。けれど紘人のご両親や母に囲まれる真紘と見て、彼を愛して慈しんでくれる人がひとりでも多くいることを嬉しく感じる。

 結婚って不思議だ。今まで他人同士だったふたりが家族なって、お互いの家も結びつきが生まれるなんて。

 前に回された紘人の腕にそっと手を添える。

「ありがとう。紘人と結婚できるなんて夢にも思わなかった」

 彼との因縁を知ったとき、絶望に飲まれこの想いはいずれ断ち切らないといけないと思った。それが今、こんな形で報われるなんて。

「それは心外だな」

「へ?」

 ところが、彼の口からは予想外の言葉が飛び出す。思わずうしろを振り返ると、紘人は穏やかに笑った。

「俺はずっと夢見てたよ。愛理と付き合っている頃から、愛理と歩く未来を」

 あの頃と変わらない瞳に映る自分は、今にも泣きだしそうだ。

「もう二度と放さない」

 そのままどちらからともなく唇を重ねる。初めてキスを交わしたときから彼との口づけは心地よくて、私を蕩かせる。

「んっ……」

 軽く触れて終わるのかと思いきや、顎を取られ体ごと彼の方を向かされた。受け入れるように唇の力を抜くと、唾液をまとった彼の生温かい舌が口内に入ってきてすぐに私の舌を捕らえる。

「ふ、ぁ……」

 彼の首に腕を回し、積極的に応えようとするが対等にはいかないのが悲しいところだ。舌から伝わる吐息も唾液も全部熱い。
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