愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 たどり着いたのは寝室で、彼のベッドの端に座るようにそっと下ろされる。紘人をうかがおうとしたら、頬に手を添わされ真剣な面持ちがすぐそばにあった。

「それだけじゃ足りない」

 なにか答える前に口づけられ声にならない。キスをしながら彼の手が私の服をたくし上げていく。脱がしやすいように体を動かすと、カットソーが腕を抜けてするりと脱がされた。隠れていた肌が空気に晒され、身震いする。

 続けてジーンズに手を伸ばされ、覚悟を決めて自分でボタンをはずすと腰を浮かすよう促されおとなしく従う。

「可愛い」

 目を細めて露わになった肌に唇が寄せられた。上下ともに下着だけになり、あまりにも無防備な格好に恥ずかしさで泣きそうになる。

「んっ……ん」

 彼の舌が太ももに這わされ、手のひらも肌を滑っていく。鳥肌が立つのは寒さだけが原因じゃない。押し寄せる快感の波にさらわれそうで怖くなる。一方でもっと触れてほしいと思っている自分もいて、求めるように彼に手を伸ばす。

 いつの間にかベッドに背中を預け、紘人を見上げる体勢になっていた。

「紘人も……脱いで」

 肩で息をしながら訴えると紘人は余裕たっぷりに微笑んだ。

「もちろん。仰せのままに」

 ためらいもなくシャツを脱ぎ捨て、彼の引き締まった体が目の前に晒される。記憶の中の彼より貫禄というか精悍さが増したと言うのか、初めて目にするわけでもないのに息を呑む。

 心臓が早鐘を打ち出し、瞬きひとつできず見つめていたら紘人が顔を近づけてきた。
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