愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「緊張してる?」

 すぐに顔に出てしまうのか、私のかすかな心の揺れも彼にはお見通しらしい。

「う、ん。だって……すごく、久しぶりだし」

 紘人と別れて以来だ。それから妊娠、出産を経て私も変わった。体形とか大丈夫かな? 押し寄せる不安に、彼から目を逸らしそうになると額にキスが落とされる。

「愛理は昔も今も変わらずに可愛いよ。前向きで笑顔が魅力的で……そんな愛理に何度も癒されて、助けられてきた。そんな愛理をこれからもらずにずっと愛している」

 彼の告白に大きく目を見開くと、紘人は切なげに顔を歪めた。

「愛理だけなんだ」

 思えば、初めてのときもそれからも紘人はいつも私を優しく抱いてくれた。愛されているって実感する。私の気持ちを最優先に、大切にしてくれていた。

「愛理」

 母から私の名前はたくさんの人に愛されるようにと、愛の字を入れたらしいが、たったひとり、大好きな彼に愛されたらそれでいい。

 聞き慣れた自分の名前を紘人が呼ぶたびに、なんだか特別なものに思えた。それは彼がたくさんの感情を乗せて名前を呼んでくれるからだ。

「う、ん。私も……紘人だけだよ」

 私も大切にしたい。大事にしたい。彼に愛されていたと確かなものがあったから、真紘を生むのもひとりで育てるのも覚悟できた。これからは一緒に真紘を守っていってほしい。

「大好き」

 こんなにも好きになって愛せるのはあとにも先にも紘人だけだ。おとなしく彼に身を委ね、彼の熱に溺れていった。
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