愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
エピローグ
さっきから鏡に映る自分を何度も目に映しては、不思議な感覚に襲われる。三人がかりでメイクやヘアセットをしてもらい、純白のウェディングドレスに身を包んでいる私がそこにはいた。
天気が心配された六月の最終日曜日。空は見事に澄み渡って、もしかするともうすぐ梅雨明けなのかもしれないと感じる。
今日は私と紘人の結婚式だった。打ち合わせなどを何度したがこうして当日を迎えた今も、どこか夢見心地だ。
長袖タイプのロングとレーンドレスはクラシカルな雰囲気にほどよい華やかさも合わさり一目で気に入った。袖を通すと憧れよりも緊張感が一気に増す。ドレスは想像以上に重たくて気軽に動けそうにはない。
そのときブライズルームにノック音が響く。ドアまで遠いので大きめ声で返事をした。
「紘人、真紘」
姿を現したのは紘人と彼に抱っこされた真紘だった。
「まーま」
お揃いの光沢のあるブルーのタキシードを着て、こうして見ると本当によく似ている。無事に一歳を迎えた真紘はますますしっかりしてきて、お気に入りの靴を履いて、よく歩くようになった。
「ふたりとも、すごくよく似合っているよ!」
声を弾ませ感想を述べる。すると真紘は紘人の腕から抜け出す動きを見せた。暴れる真紘を下ろしたら、彼は一目散にこちらに走ってくる。
「たっ、あ」
「真紘、またあとでな」
そばに来て抱っこをせがむ真紘を、私より先に紘人が背後から抱き上げた。
「いいね、真紘。お父さんさんと同じで素敵だよ」
そう告げると、真紘は両手をパチパチ叩き出す。最近、バイバイとともに気に入ってよくする仕草のひとつだ。
「お母さん、綺麗だな」
しみじみと呟く紘人に、私は微笑んだ。
「ありがとう」
なんのわだかまりもなく彼の隣にまた立てるなんて。
結婚式に先立ち、父と母が揃っているのを久しぶりに見た。父は無事に退院し、社長の任を下りたからかずいぶん丸くなった印象だ。
相変わらず愛想がいいとは言えないが、真紘のことも可愛がってくれ、母に世話を焼かれているのも受け入れている。
穏やかなどこにでもある家族に、ずっと憧れていた。私も築いていけるかな。
紘人と目が合うと彼は優しく笑った。そして、真紘をそっと下ろし、彼も腰を屈める。
「もう二度と同じ過ちは繰り返さない。愛理を一番大切にする。真紘とずっと守っていくから」
目頭がじんわり熱い。挙式前でせっかくのメイクを崩さないためにも涙は我慢しないと。
真紘がいて、紘人がいる。幸せな現実を噛みしめながら、彼から差し出された手を取る。もう二度と離さないと違って。
天気が心配された六月の最終日曜日。空は見事に澄み渡って、もしかするともうすぐ梅雨明けなのかもしれないと感じる。
今日は私と紘人の結婚式だった。打ち合わせなどを何度したがこうして当日を迎えた今も、どこか夢見心地だ。
長袖タイプのロングとレーンドレスはクラシカルな雰囲気にほどよい華やかさも合わさり一目で気に入った。袖を通すと憧れよりも緊張感が一気に増す。ドレスは想像以上に重たくて気軽に動けそうにはない。
そのときブライズルームにノック音が響く。ドアまで遠いので大きめ声で返事をした。
「紘人、真紘」
姿を現したのは紘人と彼に抱っこされた真紘だった。
「まーま」
お揃いの光沢のあるブルーのタキシードを着て、こうして見ると本当によく似ている。無事に一歳を迎えた真紘はますますしっかりしてきて、お気に入りの靴を履いて、よく歩くようになった。
「ふたりとも、すごくよく似合っているよ!」
声を弾ませ感想を述べる。すると真紘は紘人の腕から抜け出す動きを見せた。暴れる真紘を下ろしたら、彼は一目散にこちらに走ってくる。
「たっ、あ」
「真紘、またあとでな」
そばに来て抱っこをせがむ真紘を、私より先に紘人が背後から抱き上げた。
「いいね、真紘。お父さんさんと同じで素敵だよ」
そう告げると、真紘は両手をパチパチ叩き出す。最近、バイバイとともに気に入ってよくする仕草のひとつだ。
「お母さん、綺麗だな」
しみじみと呟く紘人に、私は微笑んだ。
「ありがとう」
なんのわだかまりもなく彼の隣にまた立てるなんて。
結婚式に先立ち、父と母が揃っているのを久しぶりに見た。父は無事に退院し、社長の任を下りたからかずいぶん丸くなった印象だ。
相変わらず愛想がいいとは言えないが、真紘のことも可愛がってくれ、母に世話を焼かれているのも受け入れている。
穏やかなどこにでもある家族に、ずっと憧れていた。私も築いていけるかな。
紘人と目が合うと彼は優しく笑った。そして、真紘をそっと下ろし、彼も腰を屈める。
「もう二度と同じ過ちは繰り返さない。愛理を一番大切にする。真紘とずっと守っていくから」
目頭がじんわり熱い。挙式前でせっかくのメイクを崩さないためにも涙は我慢しないと。
真紘がいて、紘人がいる。幸せな現実を噛みしめながら、彼から差し出された手を取る。もう二度と離さないと違って。