愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「なら、連絡先を聞いてもいい?」

「……どうしてですか?」

 まさか連絡先を尋ねて、理由を聞き返されるとは思わなかった。正直、異性にはモテる方だと自覚していたので、愛理の反応一つひとつに面食らい、こちらの思惑通りにいかない事態に多少、焦る。

 だから、なのかもしれない。

「さっきは嫌な言い方をしてごめん。八つ当たりだった」

 素直に彼女に謝れたのは。自分の考えを曲げるつもりはないが、彼女の考えは考えで尊重すべきだ。

「土本さんの考えを否定したかったわけじゃない。傷つけたかったわけでも」

「だ、大丈夫ですよ。私こそ自分の考えを押し付けてしまって……」

 愛理からのフォローが合って、結局その日は彼女を送っていき連絡先を交換した。それから何度かふたりで出かけて、俺からの告白で交際が始まる。

 ずっと恋愛からは遠のいていた。誰かをそばに置くのもためらって、人に心を許すことはできないと思っていたのに愛理は特別だった。

 彼女の前向きで朗らかなところに救われて、癒される。復讐だけに囚われて、それだけを糧に歩いてきたのに、愛理との未来をいつからか描くようになってきた。

 けれど、自分がされたことを忘れたわけでも復讐を諦めたわけでもない。KMシステムズが、ああいったことをしたのは俺が初めてじゃないはずだ。手慣れている感じもした。

 だから同じような被害に遭っている人間がいると予測する。会社に不信感を抱いている元社員などから内部の情報を得られたらと画策していた。
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